AI技術を悪用した仮想通貨詐欺、90万ドル以上が被害

AI技術を悪用した仮想通貨詐欺、90万ドル以上が被害

2024年初頭から暗躍している巧妙な仮想通貨詐欺が、サイバーセキュリティ企業SentinelLABSの調査により明らかになりました。この詐欺は、AI生成のYouTube動画を利用してニセの取引ボットを宣伝し、投資家から90万ドル以上(約1億4千万円)を不正に奪っています。

調査によると、詐欺グループは長期間運用されているYouTubeアカウントを活用し、AIによって合成された音声と顔を使って、視聴者に信ぴょう性のあるチュートリアル動画を提供しています。これらの動画は「MEV(Maximal Extractable Value)ボット」と呼ばれる利益が出ると謳うスマートコントラクトの導入方法を解説し、視聴者を外部サイトに誘導します。そこで配布される悪意あるコードを自らのウォレットに導入すると、資金が詐欺師のアドレスに送金されてしまう仕組みです。

SentinelLABSのシニア研究員Alex Delamottea氏によれば、動画にはAI生成コンテンツならではの特徴(機械的な口調、不自然なリズム、凝り固まった表情)が見られるといいます。しかし、最大の被害額を出した動画は実際の人物によるもので、YouTubeアカウント「@Jazz_Braze」を通じて244.9ETH(約90万ドル)が盗まれたとされています。これらの資金は複数のアドレスに分散され、マネーロンダリングが行われているとみられます。

詐欺グループは、仮想通貨関連のニュースやエンタメ情報を投稿することで、アカウントの信頼性を高める工夫を凝らしています。また、動画のコメント欄にはネガティブな意見を削除し、嘘の好意的な評価を大量に掲載。スマートコントラクトコードも暗号化やアドレスの隠蔽など様々な手口で検知を逃れています。

専門家は、「関連ツールの仕組みを十分に検証しないと、被害にあうリスクが高まります」と警鐘を鳴らしています。日本国内でも、YouTubeやSNS上の未検証の投資情報には注意し、十分な調査と確認が何より重要です。AIが生成する詐欺コンテンツが急増する中、仮想通貨ユーザーの警戒心や、情報の真偽を見極める力がますます求められています。