イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、データ可用性サンプリング技術「PeerDAS」のメインネット稼働と、ゼロ知識証明ベースの仮想マシン「ZK-EVM」が本番環境レベルの性能に到達したことで、長年の課題だったブロックチェーンの「トリレンマ」に大きなブレークスルーが生まれたと明らかにした。
同氏はXへの投稿で、これらの技術によって「分散性」「コンセンサス(安全性)」「高い帯域(スケーラビリティ)」を同時に満たす新しい種類のピア・ツー・ピアネットワークへと、イーサリアムが実際の稼働コードベースで移行しつつあると強調した。
ブロックチェーン「トリレンマ」の突破
ブロックチェーンの「トリレンマ」とは、ネットワークが「分散性」「セキュリティ(コンセンサス)」「スケーラビリティ(高スループット)」の3要素を同時に最大化することは難しく、従来は何かを犠牲にせざるを得ないとされてきた構造的課題を指す。
ブテリン氏は、PeerDASによるデータ配信とZK-EVMによる検証の組み合わせにより、このトリレンマを「理論上ではなく、実際に動いているコード」で解消しつつあると述べ、「イーサリアムをより強力な分散ネットワークへと変える根本的な転換だ」と位置づけた。
PeerDASとZK-EVMの技術的意義
PeerDASは、ネットワーク参加者がブロック全体をダウンロードすることなく、データの一部をサンプリングするだけで可用性を検証できる仕組みであり、ノードのハードウェア負荷を抑えたままデータ容量の大幅な拡張を可能にする技術とされる。
一方、ZK-EVMはイーサリアムの実行環境をゼロ知識証明で検証可能にするもので、最新の実装ではブロックの証明生成時間が従来の約16分から16秒程度へと短縮され、コストと速度の両面で約45倍の改善が報告されている。
ブテリン氏は、ビットトレントが「高帯域と分散性」は備えていた一方、コンセンサスを欠いていたこと、ビットコインは「分散性とコンセンサス」はあるものの、フルレプリケーション方式ゆえ帯域が限られていたことを例に挙げ、PeerDASとZK-EVMを組み込んだイーサリアムは3要素を同時に満たす新たなネットワークモデルになりつつあると説明した。
2026〜2030年のロードマップ
ブテリン氏は今後約4年間にわたるロードマップも提示しており、まず2026年には、BALsやePBSといった仕組みによってZK-EVMに依存しない形で大幅なガスリミット引き上げを行い、一部のネットワーク参加者にZK-EVMノード運用の機会が生まれると見込んでいる。
2026〜2028年には、ガス価格の再設計やステート構造の変更、実行ペイロードを「ブロブ」に移すなど、高いガスリミットを安全に維持するための調整を段階的に進める計画だ。
さらに2027〜2030年にかけては、ZK-EVMがブロック検証の主要手段となることを前提に、ガスリミットを一段と引き上げ、トランザクション処理能力とスケーラビリティを大幅に高めることを目指すとされる。
この移行が進めば、レイヤー2ロールアップなどイーサリアム上の各種アプリケーションにとっても、容量拡大や手数料安定化といった形で恩恵が及ぶと期待されている。
分散ブロック構築と長期的な課題
ブテリン氏はまた、長期的な目標として「分散ブロック構築(distributed block building)」を挙げ、将来的には一つの場所でブロックが完全に組み立てられることがない仕組みを志向していると述べた。
同氏によると、FOCILの拡張や分散型ビルダーマーケットプレイスといったプロトコル内の仕組みによって、検閲リスクの低減や地理的な公平性の向上を図ることができ、ネットワーク全体のレジリエンス強化につながる可能性があるという。
もっとも、ZK-EVMについては依然として安全性検証の作業が残されており、特に一部のSTARK系ZK-EVMで暗号学的前提が揺らいだ事例があることから、2026年にかけては128ビット相当の安全性を目標とした段階的なセキュリティロードマップも進められている。
そのため、イーサリアム側は性能面でのブレークスルーと並行して、暗号安全性の保証や実装チームの進捗管理など、運用面でのリスク低減にも注力していく姿勢を示している。
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