イーサリアムの現在の市場パフォーマンスが注目を集めている。ビットコインが108,000ドルを突破し、投資家の関心を一手に集めているのに対し、イーサリアムは足踏み状態が続いている。歴史的には両者の価格は連動しやすいが、ここ数週間でその動きに明確な乖離が生じており、イーサリアムの強気モメンタムがどこまで持続可能なのか、そしてビットコインの急騰が一過性なのかが議論されている。
最新のデータによれば、イーサリアムは2,470~2,515ドルの比較的狭いレンジで推移しており、ここ数セッションでの変動率も小さい。一方、ビットコインは108,000ドルを上回る水準で安定し、テクニカルアナリストの間では113,000ドルや120,000ドルへの上昇も視野に入っている。この乖離は市場参加者の間でも話題となっており、なぜ時価総額2位のイーサリアムが停滞し、ビットコインだけが急騰しているのかという疑問が投げかけられている。
ビットコインの現在の優位性を支える要因はいくつかある。最大の要因は機関投資家による需要の高まりだ。例えば、ブラックロックのiSharesビットコインETFは運用資産が720億ドルを超え、大規模な投資家がビットコインを戦略的資産として位置付けていることが明らかになった。この機関マネーの流入が価格の下支えとなり、個人投資家の動きが鈍い中でもビットコインは安定した上昇基調を維持している。結果として、ビットコインは市場全体のボラティリティに耐えつつ、強気トレンドを維持している。
一方、イーサリアムは異なる課題に直面している。スマートコントラクトの基盤としての存在感や、ArbitrumやOptimismといったレイヤー2スケーリングソリューションの開発が進む中でも、イーサリアムの価格推移は鈍い。現在の時価総額は約3,035億ドル、日次取引高も大きいが、全体的な市場活動は減少傾向にある。アナリストの中には、機関投資家の関心がさらに高まり、個人投資家が再び市場に戻れば、2025年7月までに3,800ドルへの上昇もあり得ると見る向きもある。しかし、短期的には明確な上昇材料が見当たらず、現在のレンジを抜け出せない状況が続いている。
この乖離の背景には、機関投資家の参加スタイルの違いがある。ビットコインは「デジタルゴールド」としての評価が確立しており、投資シナリオもシンプルなため、機関投資家の参入が早かった。一方、イーサリアムはエコシステムが複雑で、規制環境も流動的なため、リスク回避志向の資本が入りにくい。最近ではフィデリティやブラックロックといった大手がイーサリアム関連商品を模索しているが、普及のスピードはビットコインほどではない。
テクニカルな観点でも、イーサリアムのビットコインに対する価格比率(ETH/BTC)は過去4週間で28%以上、過去1年で53%以上下落している。この比率の低下はビットコインのアウトパフォームを示すものであり、イーサリアムが新たな資本を呼び込む難しさを浮き彫りにしている。今後もETH/BTC比率のさらなる下落が予想されており、センチメントやファンダメンタルズに大きな変化がない限り、イーサリアムがビットコインに追いつくのは難しい状況だ。
市場センチメントを示すFear & Greed Indexは現在50と中立を示しており、投資家の慎重な楽観ムードがうかがえる。取引高はやや増加傾向にあるが、全体としては直近のボラティリティや明確な材料不足を背景に、様子見ムードが広がっている。今後数ヶ月の価格予想では、イーサリアムは2,758ドル前後で推移し、ピーク時でも3,007ドル程度にとどまると見られている。これはビットコインの爆発的な上昇と比べると、控えめな数字だ。
多くの投資家が注目するのは、イーサリアムの停滞が一時的なものなのか、それとも構造的な問題の表れなのかという点だ。強気派は、エコシステムの進化や新たな機関投資家の参入、そして過去にも見られた「ビットコインの後追い現象」に期待を寄せている。一方、慎重派は、明確な新規性やイノベーションがなければ、競合するスマートコントラクトプラットフォームの台頭もあり、イーサリアムの勢いは鈍化する可能性が高いと警戒している。
短期的には、機関投資家の動向、スケーリング技術の進展、そしてマクロ経済環境がイーサリアムの行方を左右するだろう。ビットコインの強気トレンドがアルトコイン市場にも波及すれば、イーサリアムにも再び投機的な資金が流入する可能性がある。逆に、ビットコインの独走状態が続き、資本が大型・流動性の高い銘柄に集中する場合、イーサリアムはしばらく蚊帳の外となるかもしれない。